落ちる理由は、相場を外すことより
ルールの読み違い
「プロップファーム」「資金提供」「チャレンジ」という言葉を、ここ1〜2年でよく見かけるようになりました。自分のお金を大きく減らさずに、大きな金額で取引できる——そう説明されることが多い仕組みです。ただ、何にお金を払い、何が返ってこないのか、そしてどういう形で終わるのかは意外と語られません。この記事は、その部分だけを書きます。
先に結論
- プロップファームは「試験に受かった人に、大きな口座を任せる」会社です。利用者が払うのは受験料で、落ちても取引で借金は残りませんが、受験料は戻りません。
- 取引はデモ(模擬)環境だと、FTMO・Fintokeiとも公式サイトに書いています。本物の市場にあなたの注文が流れているわけではありません。
- 終わり方は「損が膨らんで退場」ではなく、決められた線に触れた瞬間に終了です。利益が出ていても終わります。
- だから受ける前に見るべきは、利益目標ではなく1日の損失の測り方・全体の損失が固定かトレーリングか・ベストデー・ルールの有無の3つです。
プロップファームとは(お金の流れで見る)
プロップファーム(proprietary trading firm=自己資金で取引する会社)は、もともと会社のお金でトレーダーを雇って運用させる業態を指す言葉でした。いま個人向けに広がっているのは、その入口を「オンラインの試験」にした形です。

大事なのは「損をしない仕組み」ではなく「負ける金額が受験料までに限られる仕組み」だという点です。取引で出した損失を請求されることはありませんが、落ちれば受験料は戻らず、受け直しはもう一度有料になります(FTMOの2ステップのように、合格して報酬を受け取ると受験料を全額返す方式もあります)。
取引はデモ(模擬)環境だと、両社とも公式に書いています
FTMOは英語サイトで「FTMOはシミュレーション取引と教育ツールのみを提供する」「ブローカーではなく預託金も受け入れない」と明記しています。Fintokeiも日本語サイトで「すべてのお客様は仮想環境で『ライブ取引のような』条件をシミュレートした取引を行っている」「実際の取引を仲介することはない」と書いています。あなたの注文が本当の市場に流れているわけではない——ここは最初に知っておいてください。
長所と短所(どちらも書きます)
| 長所 | 短所 | |
|---|---|---|
| お金 | 自分が失う上限が受験料に限られる。合格後の損失は会社の負担 | 落ちれば受験料は戻らない。受け直すたびに費用がかかる |
| 規模 | 手元資金より大きい口座を任され、利益の分配も受けられる | 大きい金額に慣れておらず、判断が普段どおりにならないことがある |
| ルール | 損失の上限が決まっているため、資金管理を守る練習になる | ルール違反はその時点で終了。利益が出ていても終わる |
| 期間 | 取引日数の下限だけで、期限が無いプランもある | 利益目標に急かされ、普段より無理な取引になりやすい |
| 出金 | 合格後は定期的に利益の分配を受け取れる | 会社が規制の外にある。トラブルが起きても公的な保護は期待できない |
Fintokeiは自社サイトのよくある質問で「規制された金融サービスを提供していないため、サービスに対する規制を受けていません」と書いています。隠さず書いてある点は誠実ですが、裏を返せば、何かあったときに監督官庁へ持ち込む先が無いということです。FX会社に口座を作るのとは、ここが決定的に違います。
受ける前に見ておく3つのルール
ここがこの記事の本題です。以下はFTMOの公式ページに書かれている定義をそのまま読んだものです(2026年9月23日に閲覧)。

1. 1日の損失は、どこから測るか
FTMOの「Maximum Daily Loss」は、こう定義されています。上限の線は、毎日0時(中央ヨーロッパ時間)に「その時点の口座残高 − 初期資金の3%(1ステップの場合)」で引き直される。そして、その線を割ってはいけないのは評価額(残高+保有中の損益±スワップ−手数料)です。
つまり線を作るのは「残高」、測られるのは「評価額」。ここが噛み合っていないと、次のことが起きます。
- その日に出た含み益は、0時に確定していなければ線を押し上げてくれません。「今日はプラスだから余裕がある」は誤りです。
- 逆に含み損は、決済していなくても線に届きます。持ち続けて耐える、ができません。
2. 全体の損失は「固定」か「日終わりで引き直し」か
FTMOは比較表で、2ステップの Max Loss を「Static(固定)」、1ステップを「End-of-day-trailing(日終わりで引き直すトレーリング)」と書き分けています。
固定なら、初期資金から10%下がらなければ大丈夫です。トレーリングのほうは「これまでの0時時点の残高のうち最も高かったもの − 10%」で毎日引き直され、線は上がるだけで下がりません。増えた分を戻しただけのつもりが、線に触れて終了、ということが起こります。
3. ベストデー・ルールがあるか
FTMOの1ステップにある条件で、最良の1日の利益が、プラスだった日の合計利益の50%を超えてはいけないというものです。公式の説明で大事なのは、超えても失格にはならないという点です。ただしその状態では合格にならず、取引を続けて薄めるまで待つことになります。指標発表で一気に目標へ届いた場合などに、ここで足が止まります。
会社ごとの条件(2社の例)
| 利益目標 | 1日の損失 | 全体の損失 | その他 | |
|---|---|---|---|---|
| FTMO 1ステップ | 10% | 3% | 10%・日終わりで引き直すトレーリング | ベストデー・ルール50%/報酬90%/受験料79〜999ユーロ・返金なし |
| FTMO 2ステップ | 10%→5% | 5% | 10%・固定 | 最低4取引日/報酬最大90%/受験料89〜1,080ユーロ・合格後に100%返金 |
| Fintokei チャレンジプラン | 8%→6% | 5% | 10% | 最低3取引日・期限なし/報酬80%/12,500円〜 |
| Fintokei 速攻プロプラン | 6% | 2% | 3% | 最低3日・最大60日/報酬90%(最上位は100%)/9,800円〜 |
出どころ:FTMOは公式サイトの「Trading Objectives」「Comparison Table」、Fintokeiは公式日本語サイトのプラン表(いずれも2026年9月23日に当サイトが閲覧)。ルールは各社が改定します。申し込む前に、公式サイトで最新の条件をご確認ください。当サイトはどちらの会社とも提携しておらず、勧める立場にもありません。1日の損失を「残高から引いて評価額で測る」という定義はFTMOのもので、他社が同じとは限りません。
同じ会社の中でも、1ステップと2ステップでここまで違います。「プロップのルール」と一括りにできるものは無い、というのがこの表の読み方です。1ステップは日次3%・トレーリング・ベストデーあり、2ステップは日次5%・固定・ベストデーなし。同じ「全体10%」でも、意味がまるで違います。
見落とされがちな落とし穴:リセットの時刻
1日の損失の線は中央ヨーロッパ時間の0時に引き直されます。日本時間では夏は7時、冬は8時。日付が変わったつもりでも、向こうはまだ同じ日です。
ここに、もう一つ厄介な事情が重なります。当サイトがティックデータで実測したところ、FX市場で取引日が切り替わる時刻(ロールオーバー)は、日本時間で夏は6時台、冬は7時台。つまりスプレッドが大きく開く時間帯のすぐ後ろに、その日の線を引き直す瞬間が来ます。
この時間帯にポジションを持ち越すと、何が起きるか
測られるのは評価額なので、スプレッドが開いた分は、そのまま含み損として線に近づきます。決済していなくても関係ありません。さらに0時を跨いだ時点の残高で翌日の線が決まるため、広がったスプレッドで評価された状態が、翌日の余裕まで左右することになります。当サイトの計測では、この時間帯の見かけの値動きはスプレッドの開閉によるもので、売値と買値の真ん中はほとんど動いていないことが多く、方向と取り違えやすい時間帯でもあります。
対策は単純です。リセットの時刻を自分のチャートの時刻に直して、その前後を避ける。当サイトの無料ツール RolloverGuard は、この切り替わりで起きる値動きが相場の動きなのかスプレッドが開いただけなのかを実測して見せます。
向いている人・向いていない人
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 自分の手法が決まっていて、同じ条件で繰り返せる | 相場ごとにやり方を変えている |
| 1回のリスクを残高の1〜2%など、数字で決めている | 「取り返す」ための取引をしたことがある |
| 受験料を、戻らない費用として割り切れる | 受験料を、生活に必要なお金から出そうとしている |
| ルールを読んで、その中で動くのが苦にならない | 細かい条件を読むのが面倒だと感じる |
「手元資金が少ないから、プロップで一発当てる」という入り方は、いちばん合わない使い方です。利益目標に間に合わせようとすると普段よりロットを上げることになり、1日の損失の線に触れやすくなります。ベストデー・ルールがある形式なら、大勝ちの1日そのものが合格を遠ざけます。
「これを使えば受かる」と言う商品には近づかない
合格を保証する道具はありません。ルールの線を自動で見張る道具はあり得ますが、それは「落ちにくくする」だけで「受かる」ことではありません。当サイトも、プロップの合格を請け合う商品は扱いません。
よくある質問
受験料のほかに、お金がかかることはありますか?
取引そのもので追加の請求を受けることは通常ありません。ただし落ちて受け直す場合は、そのつど受験料がかかります。FTMOの1ステップは79〜999ユーロで返金なし、2ステップは89〜1,080ユーロで合格後に全額返金、Fintokeiは9,800円〜(いずれも2026年9月23日時点の公式表示)。何回まで受けるかを先に決めておくほうが現実的です。
合格したら、実際のお金で取引するのですか?
この記事で確認した2社については、合格後もデモ(模擬)環境での取引で、成績に応じて報酬が支払われる形だと公式に書かれています。あなたが損失を負担しない点は変わりませんが、「本物の市場で自分の注文が約定している」という理解は正確ではありません。
EAや自動売買は使えますか?
会社ごとに扱いが違います。Fintokeiは速攻プロプランの説明で「スキャルピング、デイトレード、スイングトレード、指標トレード、EA使用OK」と書いています。一方で、複数口座で反対売買を建てる・遅延を突くといった手法を禁じる会社は多く、禁止された手法で合格すると合格が取り消されます。使う予定があるなら、申し込む前に規約の該当箇所を読んでください。
日本語で手続きできますか?
会社によります。FTMOの公式サイトに日本語ページはありません(2026年9月23日時点。言語の切り替えはチェコ語・スペイン語・イタリア語・ドイツ語・ポルトガル語・ベトナム語・フランス語のみ)。Fintokeiは日本語サイトがあります。規約の変更通知や、トラブルのときのやり取りが英語になる点は、申し込む前に考えておいてください。
税金はどうなりますか?
受け取った報酬には税金がかかります。国内FXの申告分離課税とは扱いが異なる可能性があるため、金額が大きくなる場合は税務署か税理士にご確認ください。当サイトは税務の助言は行いません。
どの会社を選べばいいですか?
当サイトは特定の会社を勧めません。この記事の3つのルールが、自分のやり方と噛み合うかどうか——そこを、申し込む前にご自身で確かめてください。日をまたいで持つ手法なら1日の損失の測り方が効きますし、指標だけを狙う手法ならベストデー・ルールの有無が効きます。
最後に:ルールを取り違えると、勝っていても終わります
プロップのルールは会社ごとに違い、1日の損失の基準や全体の損失の計算方法を取り違えると、利益が出ていても終了になります。しかも同じ会社の中でさえ、1ステップと2ステップで中身が違いました。相場を読む力より先に、条件を読む時間を取ってください。
TeamREIは、時間帯ごとの値動きやロールオーバー前後のスプレッドを実測する無料のMT4ツールを公開しています。1日の損失の枠を、どの時間帯で使うかを考えるときの材料にしてください。
関連する用語:最大連敗/PF・ドローダウン/ロット・証拠金・レバレッジ/デモと実口座の違い/スワップ・ロールオーバー
この記事のあとに
「広告」はアフィリエイト広告です。「TeamREI」は当サイトのツール・ページです。
この記事の出どころ
・FTMOのルール・受験料・報酬率:FTMO公式「Trading Objectives」「Comparison Table」「1-Step/2-Step FTMO Challenge」を、2026年9月23日に当サイトが閲覧して書き写したものです。日本語ページが無いことも、同日に同サイトの言語切り替えで確認しました。
・Fintokeiのルール・受験料・報酬率:Fintokei公式日本語サイトのプラン表およびよくある質問を、2026年9月23日に当サイトが閲覧したものです。
・ロールオーバーの時刻とスプレッドの動き:当サイトがティックデータで集計した実測値です(日本時間で夏は6時台、冬は7時台)。測り方はRolloverGuardのページに載せています。
・各社のルールは予告なく改定されます。この記事は2026年9月23日時点の内容です。申し込み前に公式サイトの最新の条件をご確認ください。
・当サイトはどのプロップファームとも提携しておらず、どの会社も勧めていません。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の取引や商品を勧めるものではありません。過去の成績は将来を保証するものではありません。